韓国の人気オーディオブランド「Astell & Kern」の販売しているアナログポータブルヘッドホンアンプ「AK PA10」
今どきアナログヘッドホンアンプなんて需要あるの?と思ってしまいますが、筆者はずっと気になっていました。
今回試聴することができたので、感想を綴っていこうと思います。
なお、本記事は試聴でのレビューであり長期間使用したレビューではありません。その点はあらかじめご了承をお願い致します。
スペック・仕様
スペックと仕様の概要を下表に整理しました。なお、メーカーが予告なく変更する可能性があるため、最新情報はメーカーのHP等からご確認をお願いします。
推奨ヘッドホンインピーダンスが300Ωまでとかなり高い出力が可能で、これで鳴らせないヘッドホンは基本的に無いと思います。
逆に推奨インピーダンスの下限値が16Ωのため、SHURE SE846のような低インピーダンスのイヤホンは推奨外のため注意が必要です。
モデル名 | AK PA10 |
カラー | Graphite Gray |
本体素材 | アルミニウム&シリコン |
アナログ入力 | アンバランス 3.5mm 3極 / バランス 4.4mm 5極 |
ヘッドホン出力 | アンバランス 3.5mm 3極 / バランス 4.4mm 5極 |
最大入力 | アンバランス 2Vrms / バランス 4Vrms |
アウトプットレベル | [低ゲイン] 2.1Vrms アンバランス / 4.2Vrms バランス(負荷無し) [高ゲイン] 3.1Vrms アンバランス / 6.2Vrms バランス(負荷無し) |
推奨ヘッドホンインピーダンス | 16 ~ 300 Ω |
サイズ (W×H×D) | 約 73mm × 140mm × 23.3mm |
重量 | 約325g |
充電ポート | USB Type-C |
動作温度 | 0℃ ~ +40℃ |
周波数特性 | [低ゲイン] ±0.2dB (20Hz~20kHz) アンバランス / ±0.2dB (20Hz~20kHz) バランス [高ゲイン] ±0.06dB (20Hz~20kHz) アンバランス / ±0.06dB (20Hz~20kHz) バランス |
S/N比 | [低ゲイン] 111dB @ 1kHz, アンバランス / 115dB @ 1kHz, バランス [高ゲイン] 114dB @ 1kHz, アンバランス / 117dB @ 1kHz, バランス |
クロストーク | [低ゲイン] -83dB @ 1kHz, アンバランス / -110dB @ 1kHz, バランス [高ゲイン] -83dB @ 1kHz, アンバランス / -110dB @ 1kHz, バランス |
THD+N | [低ゲイン] 0.0045% @ 1kHz, アンバランス / 0.0015% @ 1kHz, バランス [高ゲイン] 0.0027% @ 1kHz, アンバランス / 0.0013% @ 1kHz, バランス |
出力インピーダンス | アンバランス 3.5mm (1.1Ω) / バランス 4.4mm (1.3Ω) |
バッテリー | 4,200mAh 3.8V リチウムポリマー |
充電時間 | 約3時間 (9V/1.67A 急速充電) / 約4時間 (5V/2A 通常充電) |
再生時間 | 約12時間 (アンバランス入力1Vrms / 低ゲイン / ボリューム30%) |
付属品 | USB Type-Cケーブル(C to C), ラインケーブル(ケーブル長約10cm / 3.5mm3極 to 3.5mm3極),シリコンバンド×2, クイックスタートガイド |
生産国 | 韓国 |
メーカー保証 | 本体1年 / 付属品90日 |
詳細 | Amazon |
アナログアンプが気になった理由
筆者はSHUREのコンデンサー型イヤホンシステム「KSE1200」を卓上イヤホンとして愛用しています。
この商品は専用のアナログアンプとセットで動作するのですが、DAC機能はついていません。
当初は「アナログアンプかぁ。。」と思っていたのですが、アナログアンプはどの機器にも接続できる汎用性の高さがあり、好きなDACを選べるというメリットもあるため、実際に使ってみるとかなり使いやすいのです。
そこでスティック型USB-DACのようなDACに付属の簡易的なアナログアンプじゃなく、9万円もする本格的なアナログアンプで音を増幅するとどんな音になるんだろう。。という好奇心から、AK PA10を見つけました。
良い点・気になる点
良い点
流石に極上の音
試聴環境ですが、DACは「iBasso Audio DC04PRO」ヘッドホンは「AKG K872」を使用しています。ヘッドホンケーブルの都合上、アンバランス接続のみでバランス接続は試せていないので、こちらについてもご了承下さい。
正直、音の印象は「極上」といった感じです。徐々に音量に増幅した時に純粋な音のみが綺麗に増幅され、ノイズが全く増えていかないことには流石に驚きました。これがA級アンプの特性なのかA&Kの技術力の高さなのかは解りませんが、価格にふさわしい音を鳴らしてくれます。
上流機器に縛られない
アナログアンプのため、上流がパソコンでもスマホでもカセットでもレコードでも何でも接続することができます。パソコンやスマホに接続する時はDAC機能が欲しいと思ってしまうかもしれませんが、逆にDAC機能を別商品に任せることができるので、DACの変更による音の変化を楽しむこともできるようになります。
やはりシンプル・イズ・ベストですね。
こだわり抜かれた回路設計
まず、増幅回路は電力効率が非常に悪く発熱が多い変わりに入力波形と出力波形の歪みが極端に少ない(論理的には歪みがない)「A級回路」を搭載しています。
A級回路の電力効率は理論値でも最大50%で、残り50%以上は熱エネルギーなどに変換されるという非常に燃費が悪くリッチな回路のため、本格オーディオにはよく用いられますが、バッテリー駆動が基本のポータブルオーディオ製品にはあまり使用されません。しかしPA10はあえてA級回路を搭載しています。
また、バランス接続とアンバランス接続が回路で完全に分離されているため、バランス入力の場合はバランス出力のみ、アンバランス入力の場合にはアンバランス出力しかできません。回路を混在させないことで無用な歪みを抑える設計になっているという全体的にこだわりの感じられる回路設計になっています。
OSのサポート切れの心配がない
AndroidベースのDAP等に言えることですが、基本的にOSのサポートが切れてしまうと対応アプリが減っていき、セキュリティ的にも問題が出てきます。
アナログアンプは内部にOSなどの基本ソフトを搭載していないため、OSのサポート切れのような余計なことを考える必要がありません。長く使う上でもこのシンプルさは非常に良いですね。
気になる点
バッテリーの劣化だけが課題
ポータブルオーディオ機器やスマホ全般に言えることですが、リチウムイオンバッテリーは充電を繰り返すことで劣化が進み、最大容量が減っていきます。
特に極端な高温や低音に晒すとバッテリーの劣化が早まるのですが、A級回路は発熱量が大きいためこちらが少し気になります。ただ、筐体が大きくアルミニウム素材で放熱性が高いため、卓上利用ではあまり問題はなさそうです。熱がこもるような環境で使用することを想定している場合は注意が必要かと思います。
まとめ
以上、今回は「Astell & Kern AK PA10」の試聴レビューを行いました。
特にボリュームアップ時に雑味が混ざらず綺麗に原音だけが上がっていく様子は感動レベルでした。
オーディオあるあるですが試聴すると欲しくなりますね。いつか手に入れてまた詳細なレビューしたいと思っています。